…4。
「ん。」
…“ん”?
“ん”の一言と共に差し出された携帯電話を慌てて奪うと、
「留守電。」
ケンジの言う通り、気付かないうちに待ち受けに留守録の表示がされていた。
…聞けって事だよな?
聞きたくない!
と思いながらも、聞かない訳にはいかないだろう。
仕方なく再生ボタンを押す事にした。
『伝言が1件です。ピー。
あ、コウジ?お母さんです。
ちょっとお祖母ちゃんが体を壊したので、しばらく田舎に帰る事になりました。
それで、その間ケンジが一人になるからそっちに泊めて頂戴ね。』
…はい?
『あ、お父さんなら大丈夫。こっちから出勤するから。』
…いやいや、それはどうでもいいから。
『じゃ、よろしくね。
ブツッ!ツーツーツー…』
「……」
…悪い冗談だ。
一大事な用件とどうでもいい親父の近況を告げて切れた留守録に呆然と佇んで、
「…つまり…。」
「よろしくね。“お兄ちゃん”。」
一気に血が下がっていくのがわかった。
…つまり、ケンジと一緒に住むって事!?
「…マジかよ。」
ポツリと呟き明らかに動揺している俺を後目に、いそいそと荷物をまとめた友人達は、
「俺らはそろそろお暇するわ。」
「またな。」
「じゃ、お邪魔しました。
またね、弟くん。」
俺を見捨てるかの如く、驚く程のスピードで退散して行くのを微かな動きで見送った。
「……。」
とうとう部屋には2人だけ。
勿論、ケンジの顔に笑顔なんて、ない。
「うっそーん…。」
間の抜けた俺の呟きに、ケンジがちょっとだけ笑った気がしたが、多分きっと気のせいだ。
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