…2。
ジャラジャラと不快な雑音を引き連れてドアが開けた俺は、目の前の状況が理解出来ずに固まったまま声を漏らした。
「なっ…?」
…なんで?
どうしてここに?
鬱陶しそうに汗でおでこに貼り付いた髪を払いながら、足元に濃い影と大きな鞄を並べて立つのは、間違えるわけない。
「ケン…ジ?」
「んー。」
返事なのか挨拶なのか分からない声の主は、弟のケンジだった。
「なんっで、…いるの?」
言い方が悪かったのかもしれない。
ゆったりと下から上まで俺を見たケンジは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せると何か言いたげに口を開いて。
「……。」
しかし何も発する事なく、その視線を部屋の中へと移した。
…え?何?
変な汗が背中を伝ったが、多分暑すぎる外気の所為だ。
部屋の中に何か気になるものでも置いていただろうか。
と、視線の先を探して振り返ると、ぬっと出て来た手が俺の肩を掴んできた。
「誰?このコ。」
手の主はヨシキだ。
「あ、え、と。弟…。」
動揺し過ぎで簡素な紹介になってしまったが、逆にそれで良かったかもしれない。
その言葉に奥から二人がやってきた事で、なんとなく、少し安心した気がした。
「何、何?これが噂のケンジくん?」
「どれどれ?」
「あれ?確か高校生って言ってたよな。…おっとなぁ。」
ケンジには悪いが、俺を含め4人も年上が揃う空間に居合わせたのだ。
さぞかし居心地が悪かろう。
だけど、
俺の弟のクセに空気を読んだケンジは、一瞬だけ大人発言をしたヨシキを睨み付けると、
「こんにちは。いつも兄がお世話になってます。」
マジで2年振りと思われる可愛い笑顔で深々とお辞儀をした。
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