…1。
『カレーライスとケーキと煙草。』
「ツモ!」
「…またお前の一人勝ちかよ。」
不服そうに唇を尖らせる俺に、大学の友人が笑った。
「アオイは引きがいいからな。」
そういうカイリだって、さっきからちまちまと上がってるクセに。
「はい、もう一回。」
手早く牌をかき混ぜると、今度こそと並べるヨシキに溜め息を吐いて、
「いや、次こそ俺だね。」
確証のない自信と共に牌へ手を伸ばした。
夏休み。
びっちりと入れたバイトの予定で実家に帰らなかった俺は、大学の友人、ヨシキ、アオイ、カイリと共に不健全にも真っ昼間から麻雀を楽しんでいた。
「しっかしさ。本当に帰んなくて良かったのかよ。」
「え?」
「家。いきなりバイト紹介しろって、帰りたくない理由でもあるわけ?」
「……。」
…そんなの、答えられるわけないだろ。
弟と会いたくない、なんて口が裂けてもいうわけにはいかない。
「別に?」
気取られないように牌を捨てると、煙草を1本くわえた時だった。
ブブー。
いつ聞いても間抜けなブザー音だ。
「おい、誰か来たぜ?」
「誰だろ?」
今日は他に呼んでない筈だと首を傾げ、まだ火をつけていない煙草を手に立ち上がった。
「はーい。」
例えばそこで、俺がドアを開けなかったら。
例えば、携帯の留守録に気付いていたら…。
俺達は、兄弟のままでいれたのかな?
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