20…。
『…コウジはもう忘れてるよ。』
目を逸らして、言い放つと苛立った声が返された。
『っ、そういう問題じゃないでしょ?』
『けど、』
『ケンジっ。』
名前を呼ばれ唇を噛むと、辛そうに歪められた母さんの顔に気を緩めると泣いてしまいそうになる。
『…けど、じゃあどうすればいいんだよ…?』
心がくしゃりと潰れそうに痛んでたまらず嗚咽を漏らし出した俺は、ジッと見つめてくる母さんの目に居心地の悪さを感じた。
『…駄目なんだ…好きで好きで止まんないんだ…けど、忘れてるならこのままの方が、幸せなんだって…。』
…ちゃんとわかってる。
けど、心が、痛いんだ。
“好きだけじゃどうにもならない事がある”
わかっていた筈なのに、本当の意味で俺は気付いていなかったんだ。
泣いてどうにかなるわけがない。
頭ではわかってても心がついていかない。
もういっそ、嫌いになりたいくらいコウジの事が好きで。好きで、好きでたまらない…。
本当は思い出して欲しくて、笑いかけて欲しくて、触れたくて…。
ポロポロと口からこぼれるものは、決して母さんに言うべきことじゃないってわかってるんだ。
でも、
『だから!俺が必死で抑えてんのに蒸し返すなよ!ほっとけよ!』
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