…15。
悪戯みたいな口付けが暫く続いて、ただそれを受け続けていた俺は、いつの間にか動かなくなったケンジに気付いた。
「…上がる?」
のぼせたのかもと訊ねると、黙ったまま頷いて。
幾らか楽になった身体で無言のままバスルームを出た。
それからずっとケンジは無言で、時折眠そうに目を擦っている。
「…寝る?」
幾度訊ねただろう。
時刻はもう夜明けに近く、外が僅かに明るくなっていた。
その度に首を横に振るケンジは、眠いけど寝りたくはないみたいだ。
籠もっていた空気を窓を開けて追い出すと、昼間は湿気を含んでべたついていた空気が、今は少し涼しくも感じる。
ケンジはもう完全に眠気に勝てそうにないくらい目蓋を重くしていて、その様子に微笑みながら横に腰を下ろすと、すっかり言いそびれていた言葉を紡いだ。
「…過ぎちゃったけど、誕生日おめでとう…」
「……ん…」
肩にもたれ掛かりながら、小さく、寝言にも聞こえる返事を返してきたケンジは、本当に微かに、ギリギリ聞こえるかどうかの大きさでポツリと呟いたんだ。
「…離れたくない…」
「……。」
…聞こえたよ?
ちゃんと、聞こえた。
俺だって、一緒だよ。
けど俺は、聞こえなかったふりをしてゆっくり目蓋を閉じたんだ。
その手をしっかりと握り締めて。
少しでもその側にいられるように。
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