…16。
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いつの間に眠ってしまったんだろう。
母さんからの電話で目を覚ましたのは、既に日も高く昇った正午過ぎだった。
「………ぁい…」
『何その声?まだ寝てたの?』
明け方に寝た事と昨日からの疲れから、なかなか覚めない頭を振りぼんやりとそう声を出すと、出し過ぎて掠れていた声に母さんは呆れながら溜め息を吐いた。
『…まったく、』
「だらしがないわね」と呟く母に苦笑いして、けど次の瞬間、電話の向こうで母さんが押し黙るのがわかった。
「…母さん?」
どこか重苦しく感じる空気に胸の中がざわりと震える。
後ろめたい事がある所為で、言いようのない不安に名前を呼ぶと、聞こえてきたのは受話器越しの小さな息。
『…今から、』
「?」
『今から車で迎えに行くから。…準備して待ってるようにケンジに伝えておいて。』
言われた言葉は大した事ないものなのに、放たれた雰囲気はやはり重い。
「…………わかっ…た…」
つい言葉に詰まりながら何とか答えると、ホッと安堵の息が届くと、
「…母さん?」
『ううん。なんでもないの。
…ごめんね。ありがとね。』
突然言われた御礼と謝罪に、気が付けは口を開いてた。
「あのさ、」
…俺は、何を言うつもり何だろう。
早くなった鼓動が耳の中に響く。
ドクドクと脈打って、緊張で指先が痺れていくのがわかった。
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