…17。
「あの」
『コウジ。』
遮るように発せられた声の強さに声を詰まらせると、続いた優しい声色が鼓膜を揺らした。
『もうちょっと、待っててね。』
「…え…?」
何の事かわからないのは俺だけじゃないはずだ。
…迎えに来るのを、って訳じゃないよな?
まったく意図が読めずに首を捻ると、更に続いた言葉が余計に俺を混乱させた。
『コウジは、ずっと頑張って、我慢してきたもんね。』
「……」
『ご褒美あげたって罰は当たらないわよね?』
「母さ…?」
一瞬、電話の向こうにいるはずの母さんの手が、ぽんぽんと優しく頭に置かれた気がした。
思わず頭に手を伸ばすと、まるで見えてるようにタイミング良く「ふふ」と柔らかな笑いを残して…。
「あとでね。」
と電話が切れた。
「は…?」
…ご褒美?
すっかり混乱してしまった俺は、頭から滑り落ちた手で髪を掴むと、小さく唸り声をあげる。
電話越しの母さんは、はじめはどこか落ち着かない感じだった。
なのに、よくわからない誉め言葉の後、何かに吹っ切れたように笑って…。
「うーん…」
「……何してんの?」
切れた携帯電話を耳に当てたままだった俺は、ケンジの声で我に返った。
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