…6。
順番にシャワーで汗を流したあと、もうすっかり見慣れてしまった、上半身裸のケンジが背中から抱き付いてきた。
「…もー…、ちゃんと拭けよ。」
ポタポタと髪を伝って落ちてくる水滴が、着替えたばかりの俺のTシャツを濡らしていくを、ちょっと呆れたように抗議してみる。
でも、言われた方はそんなのお構いなしでにっこり微笑んで…。
「拭いて?」
「……」
…幼児返りですか?
なんて聞きたくなるくらい、甘えてくるケンジは、結構嫌いじゃない。
でも仕方なくって感じで拭いてやると、気持ち良さそうに目を細めて笑った。
「今日は、どうする?」
水を含んで少し色の濃く見える茶髪は、張りはあるが毛先が少し傷み始めていたが、硬くも柔らかくもない髪は、乱暴に拭いても絡まったりせずにストンと落ちる。
ふんわりと仄かなシャンプーの香りをさせる髪に、そっと唇を寄せると、
「…こうしてる…」
顔を上げたケンジの目が、色付いて迫ってきた。
「…ん、」
もう、柔らかさも厚みも身体が覚えてしまった。
くちゅり、と音を立てて舌を絡ませお互いに舌を絡ませると、より深く唇を合わせていく。
離れるとかかる息がくすぐったくて、何度も何度もそれを味わった。
いつの間にか繋いだ手は、今は形を確かめるように指が絡んでいる。
「…ケンジ」
熱を持った目で見つめると、その意味を直ぐに感じ取ったケンジが、「いいの?」と首を傾げた。
…駄目なわけないじゃないか。
本当は、ずっと望んでいたんだ。もっともっと触れて欲しいって。
でも、
それでもお互いに進まなかったのは、それを“日常”にしたくなかったからだ。
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