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…3。




「……」



まあ、確かにアオイにすれば似合わない事だったかもしれない。
多分あの話だって、はじめは話すつもりじゃなかったんだろう。


細かい傷の付いた似合わない時計を撫でながら、辛そうに顔を歪めるアオイを思い出した。

いつか、アオイの傷を癒やしてくれる、寄り添える誰かが現れるといいな、なんて心の奥でひっそりと思う。


俺にとって、ケンジがそうであるように。




「ま、二、三日もすればいつも通りになるんじゃねぇ?」
「そうそう。」


多分、何も知らないであろう二人の言葉に眉を下げると、ケンジと顔を見合わせその手に触れた。


「とりあえず家に帰るんだろ?」
「うん。」



助手席に座って、前を向いたままのヨシキに答えながら、ケンジの爪の先を撫で、指を絡ませる。

その行為に少しだけ口元を緩ませたケンジは、同じように爪の先を親指で撫でた。

ぴったりと合わさった手のひらが、ほんのりと汗ばんで。
でも全然不快感なんてない。




「どうする?買い物するならスーパーにでも…」


指先だけで無言の会話を繰り返していると、何気なく振り返ったヨシキが、繋がれた手を見付けて呆れた表情を作った。



「いちゃついてんな、タコ!」
「痛っ!」


思いっきりバシッと叩かれたのは、俺じゃなくケンジだ。
叩かれた頭を押さえると、痛かったのかうっすらと涙を浮かべて唇を尖らせている。


拗ねた顔も可愛い…とか思っちゃった。




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