…17。
「ケ、ン…?」
スルリと背中に腕が回されて、やんわりだが、キュッと力を込めてくる。
離れたくないと、全身で伝えてくるような温もりに息を飲んで、同時に爪先から頭まで熱が上がっていく感覚を味わった。
…熱い。恥ずかしい。
それでも嬉しさが込み上げてきて、その髪にそっと触れると、
「…酔った?横になる?」
自分でもわかるくらい甘い声だったと思う。
本当は抱き締めたかったが、さすがにこの状況でそれは出来ないってわかってる。
「んー…。」
曖昧な返事で言葉を濁し、甘えてくるケンジに苦笑いすると、ゆっくりと寝そべらせて優しく髪を梳く。
…寝ちゃった。
規則正しく上下する胸に、既に目蓋は閉じられていて、嬉しさと切なさで胸がギュッと苦しくなって…。
もっとケンジに触れていたい。
けど、今の俺にはその資格がない気がする。
記憶が無くなる前の俺には、その資格があったんだろうか。
考え始めるとどうしようもなくマイナス思考になってしまう自分に溜め息を吐くと、後ろから掛けられた声に振り向いた。
「…ケンジくんも寝ちゃったの?」
「…んー。」
はい。
と新しい缶を手渡してきたアオイにお礼を言うと、近くにあったタオルケットを掛けて、残り三人での飲み会を再開する事にした。
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