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…10。




考えたままアオイを見続けていると、


「何?惚れた?」

「ない。惚れない。それはない。」


即答でキッパリと否定すると、「四角関係も面白そうなのに」と、目を細めて笑った。



「飲んでるか!」
「うわぁっ!」


タックル擬きでいきなり突っ込んで来たのは、既に半分以上出来上がっていたヨシキだった。

どうやらカイリにジンロを1本飲ませたあと、ケンジに酒を勧められ続けていたらしく、気が付くとヨシキの周りは空き缶だらけ。

勧めていたケンジは、カイリが気持ち悪くなったらしく洗面所に連れて行ってやるところだった。


「なーなー、どうなの?思い出した?」

酒臭い口を耳元に近付けながら、ケンジがいないのをいい事に堂々と聞いてくるヨシキを引き離すと、


「全然。一ミリも。」


…本当、思い出せれば楽なのに。

「…でも、ケンジがここに一緒に住んでたってのは、理解した。」
「どゆこと?」


目の回りを赤に染めて、どこまで本気で聞いているのかわからないヨシキに苦笑いすると、


「初めて来たにしては慣れすぎだろ。」


心のどこかで「記憶なんか失ったいない」という気持ちがあった。
でも、ここに着いてすぐに、それが間違いだと理解してしまった。



「……なあ、俺、何があったの?」


記憶がなくなる前に、何が。


眉間にシワを寄せて告げると、すぐに真顔になった二人が少しだけ息を飲んだ。






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あきゅろす。
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