…12。
「高校の時、戸籍謄本で本当の母親の名前を初めて見て、でも、やっぱりな、位にしか思わなかった。自分の事のはずなのに…。」
興味がなかった、といえばそれまでかもしれない。
もちろん、幼い頃から心無い人達に虐げられてきた事は辛い記憶ではあったけど、その理由とか原因とか、そんなものをどうでもいいくらいずっと側にいてくれた家族は俺の宝物なんだ。
自嘲するように口元だけで笑みを浮かべると、ゆっくりと口を開いた。
「家族は大事だ。凄く。すっごく…。
血が半分しか繋がってなくても、全然繋がってなくても凄く大事。悲しませたくなんかない。」
「……。」
「けどさ、知りたいんだよ。
悲しむって言われても、やっぱり知りたい。
自分ではどうしようも出来ない事とか、事実をどうこうしたいとは思わないよ。
ただ、自分の身に起こった事ぐらいは知っておきたい。」
「家族が傷ついても?」
「うん。」
「自分が傷ついても?」
「うん。」
「…思い出したら、コウジの心が壊れるとしても?」
「っ、」
“壊れる”の言葉に一瞬息を飲むと、ジッとアオイを見つめ、もう一度はっきりと言葉にした。
「教えて。」
真剣な俺を見たアオイが、ひときわ大きい溜め息を吐いて、
いつの間にか後ろから抱き付いていたヨシキは、俺の頭に顔を埋めるようにすすり泣いていた気がした。
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