…9。
「……つーか、この飲み会の首謀者、アオイだろ?」
「あ。わかった?」
「だって、スッゴい楽しそう。」
…むしろ“首謀者”を否定しろ。“首謀者”を。
溜め息混じりに手元の缶を飲み干すと、すぐに次の缶を渡してくるアオイを軽く睨んだ。
「んな怖い顔しなくても、これ以上拗らせたりしないよ?」
…やっぱり。
コイツ、絶対この間のやり取りを知ってる。
ケンジがヨシキと俺が付き合ってるって言った事も、もしかしたらキスした事も。
それを踏まえてからかってるか、状況を自分の目で確認したいと思ってるってとこだろう。
「…悪趣味。」
ボソッと呟くと、楽しそうな笑みを浮かべていたアオイがちょっとだけ眉を下げた気がした。
「幸せにはある程度の高低が必要なんだよ。
そうじゃないと幸せが何なのかわからなくなるだろ?」
わかんないかもしれないけどさ。と呟く姿はどこか悲しそうで。
「……わりぃ。」
つい、反射的に謝ると、
「ま、要は俺を楽しませてくれればいいだけだけどね。」
「…最悪。」
アオイは、不思議な奴だ。
いつも楽しそうなのに、どこか寂しそうで…。
親身になって相談に乗ってくれたりするが、同時にさらりと裏切ったりする。
掴み所のない奴。
と言えば聞こえがいいが、どうしようもなく自虐的に感じる時があって、
何を考えてるかわからない。
でも、わからなくていいと思ってしまう。
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