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…3。




「は!?」

「ん?なんだ聞いてなかったのか?病み上がりを一人で置いとけないだろ?
…ちゃんとお兄ちゃんの面倒みるんだぞ?」


…ちょっと待って、聞いてない!


びっくりしてケンジを見ると、なんとも言えない微妙な表情をして母さんに視線を送っていた。


「……。」
「…仕方ないでしょ。」


それに応えるように呟いた母さんは、ボソボソとケンジと何か話した後、辛さと苦さを含んだ表情を浮かべながら少しだけ微笑んだ。



この時の俺は、母さんにケンジの気持ちがバレてる事も、ましてや俺の気持ちにも勘付かれていたなんて全然気付いてなくて。
母さんの中でどれほどの葛藤があったとか、二人の間にどんな約束が交わされていたとか、本当に全然知らなかったんだ。






アパートには上がらずにそのまま帰って行く二人を見送ると、何となく気まずい気分で部屋のドアを開けた。


「まあ、入って」
「ん。」


久し振りのアパートは、埃っぽくて蒸し暑い。


「暑っ、」


小さく声を漏らしながら適当に荷物を置くと、空気の入れ換えの為に窓を開けた。


湿気を含んだ熱気が頬を撫でる。
外気との温度差はほとんどないが、幾分新鮮な空気を吸い込むと、いつの間にか隣に立っていたケンジを見ると、気付いたケンジが俺を見た。



「掃除、するんだろ?」
「……うん。掃除機出して。」

「…自分でやれよ。めんどくさい。」




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