13…。
「ケホッ…、何こんなとこで…」
そうそれは、外の、しかもこんな喫茶店でする話ではない。
車で来てるはずなんだから、せめて誰もいない車内にして欲しい。
「この店、一度入ってみたかったのよ。」
ハンカチで濡れた部分を拭いたあと、澄ましてカップに手を伸ばす母さんに眉をしかめると、こういう人なんだ、諦めるしかない。と溜め息を吐いた。
俺が、自分が同性にしか興味が持てないと、気付いたのはいつだっただろう。
多分中学に入ってしばらくしてからだ。
当たり前のように同級生が異性の話で盛り上がる中、自分が全くと言っていいほど興味が持てない事を疑問に思っていた。
異性より、同性といた方が楽しい。
それが、思春期前の子供染みた友情だけでなく、違う意味を持っている事に気付いたのは、それこそ友達の悪戯が引き金だった。
「なあ、いいもん見せてやるよ。」
ニヤニヤと悪巧みを考えているような顔で差し出された本は、異性の裸体が写し出された本。
「兄ちゃんの部屋からパクってきたんだ。もっと凄いのもあるぜ?」
楽しそうに股間を膨らませながら次々に本を出してくる友達を見た時、目の前が真っ暗になった気がしたんだ。
だって、俺はその本になんの興味も持てない。もちろん反応すら。
けど、
「抜いた事ある?」
なんて聞かれて、
「こうすんだぜ。」
なんて、得意気に晒された友達の下半身には、ムカつくくらい興奮したんだ。
それから何度試しても、やっぱり異性に欲情する事はなかった。
そして、やっぱり欲求の対象が同性なんだと思い知らされた。
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