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唇を重ねるふたりを見て、嫉妬で胸が焼かれるかと思った。

自分で言ったくせに最低だ。


逃げ出すしか出来なかった自分はやっぱり子供で。
好きな人の幸福を祈ることなんて出来る日がくるのかもわからないくらい、ただの子供だ。


あの柔らかい唇の感触を思い出して、熱くなる体が苦しい。

その唇に最後に触れたのが、皮肉にも「守る」なんて出来もしない誓いを立てた時なのも、苦しくて仕方なかった。


早足で廊下を歩いていると、談話を目的とした小ホールのテーブルで、アオイさんとカイリさんが話してるのを見掛けた。


「―…、」


俺達の関係を知っているアオイさんに、一瞬、何もかもぶちまけて縋りたくなったが、開いた口からは息しか出て来なかった。


…迷惑にしかならない。
わかってる。


俺達の関係は、こんな所で口に出していいような事じゃないし、それが出来たとしても誰かが簡単に答えを出せるような事でもない。

しかも、
今のコウジには、その関係すら消えて、ない。


胸の中でグルグルと渦巻く激情が出口を求めて彷徨うが、そこに出口なんか見つかるはずもなく…。


二人に見付からないようにエレベーターに乗り込むと、一階のボタンを押して目を瞑った。



ただ逃げてるとしか思われないかもしれないが、これがコウジを守る唯一の方法に思えたんだ。




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