…6。
「それはケンジくんに…んぐっ」
ニコニコと話し出すカイリの口を押さえたアオイとヨシキが目で「お前は黙ってろ!」と言っている。
でもそれを俺が見逃すわけなくて、
「…ケンジが?」
やっぱりおかしい。
何か隠してる。
思いっきり不信な顔をした俺は、名前の出た初対面のはずのケンジを見た。
「…ごめんな?携帯勝手に借りて連絡したんだ。コウ…兄貴、暇そうだったからさ。」
…なんでだろう。嘘っぽく感じるのは。
誤魔化そうとしてる気がして眉間のシワを深くして、キッとカイリを睨み付けると、
「カイリ!」
「ふぇっ!?」
突然名前を呼ばれたカイリは驚いて変な声をあげている。
「お前、知ってる事全部話せ!」
ぶっちゃけこの中で一番口が軽そうなのはカイリだ。
正確には軽いんじゃなく隠し事が苦手なタイプ。
アオイはいつだって本音は見せないし、ヨシキだって口が堅いのを知ってる。
ケンジは、目覚めてからの数日間、なんの情報もくれなかった。
明らかに目を泳がせるカイリを更に睨み付けると、アオイがすかさずカイリの手を引いて病室を出て行こうとした。
「なっ!ちょっと待てよ!教えて…!」
…嫌なんだ。
目覚めてからずっと感じる喪失感が、日に日に大きくなってく気がして。
起き上がろうとした俺をケンジとヨシキが取り押さえて、
「なんでっ!?」
…ヤバい、泣きそうだ。
じわりと視界を塞いでいく涙に唇を噛んだが、…もう抑えらんないよ。
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