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…3。




…何かがおかしい。
その自覚はあった。



目覚めると知らない場所で、俺を見たケンジが笑って泣いたんだ。



それから、そこが病院だとすぐに気付いたけど、
事故?怪我?

全然記憶にない…。


胸の奥に広がっていく不安感に見上げたケンジは、

「もう大丈夫だよ。」

って悲しげに笑ったんだ。







「…どこまで覚えてんの?」

「?」

どこまでって、何が?


聞き返そうとしたけど、俺を見つめるケンジの目が、真剣だったから止めた。



「…っと…、アパートで…ヨシキとアオイ…あ、大学とダチと麻雀してて…」


って、何言ってんだろ俺。


少なくともケンジと一緒にいたあの頃の俺は、麻雀なんてしなかった。

別に賭け麻雀をしてたってわけじゃないけど、なんとなく大好きな弟に幻滅されたくないって思うのは当たり前だろ?

居心地の悪さに言葉を濁すと、目を伏せたケンジが小さい声を発した。


「お、れの…、事は…?」


…俺の、事?


ちゃんと覚えてる。
ケンジは、俺と5つ年の離れた弟だ。


さっきだって名前を呼んだはずだし、俺が忘れてない事ぐらいわかってるはずだ。


「……弟の、ケンジ…?」


意味がわからず疑問系になってしまったが、今の俺にはそんな事より突然泣きそうにケンジの顔が歪んだ事の方が重大だった。


「なっ、どうした!?」


俺の声に息を飲んで、無理矢理に笑顔を作るケンジに眉を下げると、何か言いたげに口を開き、すぐに噤んでまた、笑ったんだ。




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