[携帯モード] [URL送信]
…4。




「…事故、ね。」


ケンジの口から事情を聞いた俺は、見に覚えのないその話を安い小説のような感覚で聞いていた。


確かに怪我はしてる。
たんこぶみたいに腫れた頭部に痛む背中。

けど、事故の怪我ってこんな感じだったっけ?


もちろん事故に遭ったのなんか初めてで、それが違うなんて決め付ける事なんか出来ないけど…。

つーか、記憶亡くすなんてどんだけだよ。
アレ?事故のショックで記憶飛ぶってヤツ?

そんな事が自分の身に起きるなんて…。

夢みたいだけど、現実なんだよな?




ケンジの話に寄ると、ヨシキ達と麻雀をしていたあの日。
バイトに行こうとした俺は事故に遭った。
どんな事故だったのか詳細を教えてくれなかったのは、
嫌な記憶をわざわざ思い出さなくてもいい。

そういう事らしい。



二週間以上続いた昏睡は、周りによっぽど心配をかけたんだろう。


「…ごめんな?」

素直に謝ると、


「……ごめん…。」

何故かケンジに謝り返された。



…なんで?
何かおかしくないか?

なんでこんなに胸がもやもやするんだろう。

この胸の奥にある喪失感は…?
…わかんないけど、
ぽっかりと空いた胸の真ん中に、凄く大切なものが埋まっていた、そんな気がするんだ。




連絡を受けて駆けつけた両親も担当医も、それから事情聴取に来た警官も。

事故直前の記憶がない事を伝えると、悲しそうになのにホッとした顔を見せた。

あとから聞いた祖母ちゃんの死も、悲しかったけど、俺には昏睡していたという二週間の方が気になって仕方なかったんだ。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!