…19**。
「ずっと入りたかった大学にやっとの思いで合格して。これからって時だったのよ?
…なのにあの馬鹿な男が!
結婚?妊娠?なんで?こっちが聞きたいわよ!なんで産まれたの!!」
見開いた目をキツく瞑ると涙を流して歯を食いしばった。
「…だからあんたに復讐するの。どう?屈辱でしょ?辛い?悲しい?死にたい?」
一つ一つの言葉が俺の胸を深く抉っていくのは、どこか心の奥底でこの女を信じていたからじゃないのか?
捨てられた事は知ってる。
酷い人だったという事も。
けど、憎みきれないのはなんでなんだ?
「…っ、…ぅっ…」
…もう駄目だ。
涙が止まんないよ。
苦しい。
ギシギシと心が潰されていくみたいで目を閉じた。
何も見たくない何も聞きたくない。
「…今もっとイイモノを用意してるから…、待っててね?」
耳元で囁きながらクスクス笑う声に目を見開くと、その目の異様さが俺にとって『良い事』ではないのを物語っていた。
…今ですら人生最悪だというのに、これ以上何があるんだ。
想像すら出来ない。
青ざめた顔を向けると嬉しそうな顔をして、
「さあ、あの人が戻るまで楽しいコトしてよっか。」
…ああ、もう逃げられない。
汚れた唇にキスを落とされ、泣きながら目を閉じた。
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