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…10。
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…雨の音がする。


はじめに戻ったのは聴覚だった。
ぼんやりとする頭の端で雨音を聴いた気がした。



「…ぐむ…」


次にわかったのは、塞がれた口と両手足が縛られてているという事。
そして何も見えないという事実。

キツく何かで結ばれた目を必死に開けようとしたが無理で、言いようのない悔しさと悲しみで目元が湿っていくのがわかった。


…怖い。


こんな直接的な暴力は初めてた。
蔑まれても汚い言葉を浴びせられても、決して暴力を振るわれなかったのは、自分がまだ子供だったからなのかもしれない。

どうしようもなく孤独で怖くて…

「…ふぇんひ…」


開かない口でケンジの名前を呼んでも届かない事はわかってるのに、それでも、無意識に縋ってしまう自分が情けないよ。




…逃げなきゃ。


泣いていても仕方ないと息を吐くと、とりあえず必死に手を動かしてみた。

でも、ガムテープのようなもので、ベッタリとぐるぐる巻きにされた腕は緩む気配すらまるでない。
せめて目隠しだけでもと肩で押し上げてみたが、それも僅かに表面を擦るだけでなんの意味もなかった。



…駄目だ。
逃げる事も出来ず、ただ助けを待つしかないのか?


俺がおじさんを送って行った事は叔母が知っている。
けど、…もしグルだったら?


ぶるりと身体が震えた。


助けなんて来ない、場合もあるんだ。

いくら俺が居ない事に気付いても、探すすべなんてほとんどない。
財布と携帯電話だけは持っていた筈だったが、重みの無くなったポケットがそれを奪われた事を物語っていた。





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あきゅろす。
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