…12。
「…何これ…。」
女の冷めた声が近くでする。
「プレゼントだってば。」
嬉しそうなおじさんの声に、呆れた溜め息を吐いた女は、
「…なぁに?3Pでもするつもり?嫌よ。こんな誰だかわからないようなガキ。」
苛ついた声におじさんは笑い、「まさか」と大袈裟に嘲笑う。
「…感動のご対面だよ。」
目隠しが取られた。
キツく結ばれていた所為で歪む視界に映ったのは、輪郭のぼやけた女の姿で、
「っ、」
その女は俺を見て驚きに息を飲んでいた。
「驚いた?」
…何がだろう。
まだ視界がはっきりしない俺には、何の事なのかさっぱりだ。
「…見つけたの?」
ひやりとした声を出し、そっと俺に伸びてきた手に身を引くと、
「愛しい貴女の探し物ですから。」
グイッと思いっきり引き寄せられた。
「会いたかったわ、香司。」
抱き締められて目を見開くと、心臓がドクドクと激しく脈打ち、冷たい汗が背中を伝っていく。
…まさか、
やっと離れた女が真っ正面から俺を見て、視界が完全に戻った俺が今度は息を飲む番だ。
「香司、お母さんよ。」
そこには、吐き気がしそうなほど俺に似た女の顔が笑っていた。
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