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16…。




「…ごめんなさいっ…」



泣きながら謝る叔母を殴りたくて仕方なかった。

…そんなそっちの事情にコウジを巻き込みやがって!



強く拳を握って振り落とそうとすると、


パンッ!

響いたのは、頬を叩く音だ。


「うちの息子をなんだと思ってるのっ!」


叔母の頬を平手打ちして、怒りに肩を震わせた母さんに驚くと、


パンッ!

「…いくら妹でも、許される事と許されない事ぐらいわかるだろ?」


今度は父さんが静かに怒って頬を叩いた。


「っ、ふっ…」


頬わ押さえながらぼろぼろと涙を流す叔母を容赦なく引き寄せて、


「コウジはどこだ。そいつの家を教えなさい。」


泣き続ける叔母から住所を聞き出すと、直ぐ様車に乗り込んだ。



…無事でいて欲しい。

おじの家に向かう中、俺は泣きたくて仕方なかった。



…守るとかずっと一緒とか、どの口が言ったんだろう。


結局俺は守る事も一緒にいることも出来なくて、口先だけの馬鹿な子供と同じだ。


コウジがおじと家を出たのは三時過ぎ頃で、俺がいないのに気付いたのは六時過ぎだ。
それだけでも三時間もロスがあるというのに、それから一時間も行方がわからなかった。



相変わらずコウジの携帯電話は、電波の届かないか電源が入っていないと繰り返すだけで、




「……っ、」


四時間だ。
四時間も、一体なんの話をするっていうんだ。

そう考えたのは俺だけじゃなかったみたいで、


「…ねえ、アナタ。…その…義弟さんは、そういう…」


そこまでで口を噤んだ母は真っ青な顔で震えていた。


「……すまない。わからないんだ…」


皆まで言わなくても何を言いたいのかわかって、胸の中が憎悪で焦がれそうだった。




『…んっ、…ケン、ジ…』


頭に過ぎったコウジの甘い声が心音を早めて酸欠すら起こしそうだ。


コウジが俺以外に抱かれるなんて絶対に嫌だ!

無意識に隣に座る母さんの手を握り締め、その強さに母さんが顔をしかめるのに俺は気付かなかった。

心配そうにこっちをみた母さんが、人でも殺しそうな顔で前を睨み付ける俺に、小さな疑問を抱いたのも。





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あきゅろす。
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