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「あれ?コウジは?」
コウジがいない事に気付いたのは、夕暮れ近い時間帯だった。
「え?…いないの?」
忙しく酌を注いだりしていた所為で気付けなかったがどこに行ったんだろう。
本当なら一緒に注いで回るところだったが、嫌な顔をされて葬儀の邪魔をしたくないと、コウジは一人で席に座っていた筈だった。
「二階は?」
「二階もトイレも確認済み。」
後は外くらいしか思い付かなくて玄関へ行くと、案の定靴がない。
「…どっか出掛けたの?」
何だろう。
胸騒ぎがする。
ポツリと呟いて玄関を出たが、コウジの気配はない。
「あ、叔母さん!コウジ見なかった?」
玄関近くにいた父さんの妹に声を掛けると、
「…さあ?知らないわ。」
「そう…」
モヤモヤとした気分のままとりあえず家に入ると携帯電話を取り出した。
…繋がらない。
連絡が取れないとわかると、さっきよりも不安が募るのは何でなんだ。
見上げた空に黒い雲が流れだして、突然降り出した夕立が俺の心まで曇らせていくみたいだ。
「…コウジ。」
名前を呼んで携帯電話を握り締める俺を、叔母が辛そうに見つめていたんだ。
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