…2。
ゆっくりと歩いた所為で、家に着いたのは歩きはじめて30分以上が過ぎてからだった。
緩やかな坂の上にある祖母の家は、人の気配はあるもののひっそりと静まり返っている。
古い日本家屋の玄関前に立ち、取って付けたような呼び鈴に手を伸ばしてからケンジを見た。
「…ケンジ。」
窘めるように名前を呼ぶと、眉をしかめて目をそらされて。
もちろん、それは喧嘩をしたからとかそんな理由ではない。繋いでいた手を離して貰いたいからだ。
けど、ケンジはわかってて更にその手に力を込めた。
「………ケンジ…」
「や。」
全部を言う前に却下され眉を下げて、
…わかってるだろ?
と首を傾ける。
ここでは、俺と仲良くなんてしていては駄目だ。
今までだって、散々嫌な顔をされていたじゃないか。
「……ケンジ、好きだよ。だから、」
離して。
俺の言葉に顔を上げて、渋々手を離してくれた。
呼び鈴を鳴らすと奥から顔を出したのは叔母に当たる人で、
俺の顔を見た後やっぱり嫌な顔をして、それでも作り笑いで出迎えてくれた。
ケンジと共に座敷に上がり、まだ帰ってきていない、祭壇だけが綺麗に飾られた部屋で一人ずつ線香をあげたんだ。
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