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…4。




それから父さんは慣れない子育てと勉強とバイトと。忙しい日々を過ごした。
それでも、まだ若い父さんには辛い日々に限界だったんだと思う。



だから、頭を下げて俺を祖母に預けた父さんを、俺は憎んでたりしない。
むしろ、大好きだよ。



それから今の母さんと再会して、母さんからの熱烈なアピールに結局折れて、ふたりが結婚したのは俺が2歳の時。

そして、ケンジが生まれたんだ。



俺達は、ちゃんと“家族”だった。
けど、けどさ。
『まわり』は違ったんだ。



日に日に女に似てくる自分の顔に、噂だけは広がるのが早い田舎ならではの暴力があった。


「上の子は卑しい女そっくりの顔」
「きっと性格も歪んでるよ。あの女が育てたんだろ?」
「汚い」
「気持ち悪い」


子供だから気付かないなんて事はない。
全部かはわからないが、それでもちゃんと覚えてる。



「俺の顔が父さん似なら良かったのに。」
そう泣いた日もあったよ。


だから俺には友達なんていなくて、俺の全ては“家族”だった。

毎日ケンジと一緒にいて、母さんが少しも隔てなく接してくれて、父さんが豪快に遊んでくれて、祖母ちゃんが皺くちゃな手で優しく撫でてくれる。

そんな日々が大切で愛しいものだった。



父さんの転勤が決まった時。
本当は通える距離だったのに引っ越してくれた。
言われなくても、それが俺の為だって事くらい気付いてる。


祖母ちゃんのいない新しい家で、大好きな祖母のいない日々にケンジは辛そうで。
それでも、文句の一つも言わなかったのも、気付いてたからなんだよな?





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