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…7。




式は粛々と行われた。


通夜も葬儀もあっという間で、火葬され小さくなった祖母も無事にお墓へと埋葬されたんだ。


俺はというと、勿論悪意のある扱いは受けたがそれでも酷く何か言われる事はなかった。

多分ずっと父さんか母さんかケンジがそばに居てくれたからだろう。


だから油断していたんだ。

本当、自分は馬鹿だと思う。





「コウジくん。送ってくれないか?」


そう声を掛けてきたのは、叔母の旦那の弟に当たる人だった。

葬儀後の食事会で煽るように酒を飲んだその人は、明日は仕事だから帰りたいらしい。

聞くところによると車で15分ほどの隣町に住んでいるらしく、飲んでいなかった俺に声を掛けたらしかった。


「いいだろ?義姉さん。」


声を掛けられ嫌そうに顔を歪めた叔母は、それでも俺に「よろしく」と声を掛け、

俺は嬉しかったんだ。
頼られた事が。




「じゃあ、兄さんには私から伝えておくから。よろしくね、コウジくん。」
「はいっ!」


帰りのタクシー代は払うからと言われ、おじの車を運転することになった俺は、真っ直ぐ歩けないおじを抱えて車に乗せると、言われた通りに隣町に向かって走り出した。



「高そうな車ですね。」

「高いぞぉ〜擦ったら買って貰うからなぁ〜。」

「え?勘弁してくださいよ。」


酒の所為か俺の事を知らないのか陽気なおじとの会話は楽しいものだった。




「駐車場は、ここね。」
「はい。」

「あと、部屋まで送って〜。」
「仕方ないですね。」


苦笑いで荷物を持つと、おじの腕を肩に掛けて、


…すげぇ。


おじの住むのは五階建ての新築マンションだ。

高級な車に乗っているだけはある高級そうなマンションは、綺麗なエントランス。
なんというか、高そうだ。




エントランスを抜けエレベーターのボタンを押すと、


「おじさんの部屋は何階ですか?」

「おじさーん?まだまだおじさんなんて年じゃございますん!お兄ちゃんって呼んで〜。」


陽気な酔っ払いに吹き出して、ノリで「お兄ちゃん」なんて呼んでみる。


「じゃあ、お兄ちゃんの部屋は何階?」

「3かーい。」


笑いながらエレベーターに乗って、三階のボタンを押した。





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あきゅろす。
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