…13。
…脳みそが溶けるかと思った。
不快でしかない微笑みを浮かべた母と名乗る女が、塞がれたままの口にキスを落として、頭がおかしいとしか思えない歓喜におじさんに抱き付いている。
「大好き。」
甘ったるい声を出してその唇にキスをして、それに嬉しそうに応える様を見せ付けられ吐き気がする。
「じゃあ、約束通り結婚してくれる?」
「もちろん。」
首の後ろに腕を回し、そのまま情事をはじめる二人から目を逸らすと、たまらず口の中に酸っぱい物が逆流していくのがわかった。
はじめられた行為に縛られた腕では耳を塞ぐ事も出来なくて。
…知ってる。
俺は、この光景に覚えがある。
まだ幼くて記憶なんて薄れて消えていた筈なのに、俺はこの光景を知っていた。
高い柵の中、ベビーベッドの中で、父さんじゃない男に覆い被される女をただ泣きながら見ている。
俺の泣き声に気付いている筈なのに無視を決め込む二人は、嬌声を上げながら、ふと俺を見て笑うんだ。
「んーっ!ん!ん゛!」
嫌だ。
汚い。
気持ち悪い。
聞きたくない。
…助けて!
涙を流して塞がれた口から必死に声を上げ、聞きたくないと叫び続けた。
それでも、そんな声だけじゃ嫌でも耳に入るそれをかき消す事なんて出来なくて、
「ん゛っ!」
暴れた拍子に頭を打ち付け、俺は意識を失ったんだ。
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