…15。end
電話が鳴ったのは、その日の深夜。
もう日付を跨いでたから、翌日の方が正しいだろう。
電話の相手は母さんで、一つの訃報を知らせていた。
…なんだろう。
罰があたったのかな?
幸せの分だけ不幸があるとしたら、これがケンジとのセックスの見返りだったのかもしれない。
翌朝、お盆を待たずして向かう事になった田舎は、懐かしくて胸が痛い。
祖母の死。
それが、知りたくなかった現実へと繋がっていた。
電車が揺れる。
ガタンと音を立てて。
隣に座ったケンジはずっと無言で、必要最低限のものを詰め込んだバッグをずっと握っていた。
ケンジはお祖母ちゃん子だった。
五歳までずっとお祖母ちゃんに面倒を見てもらっていたからもある。
かくれんぼした庭先も、二人で帰った畦道も、全部全部田舎の思い出だ。
「…ケンジ…」
寂しそうに景色を眺めるケンジを呼ぶと、
振り返ったケンジが唇を押し当ててきた。
「ん、」
田舎独特の誰もいない電車に揺られ、長い間唇を合わせて。
やっと離れた唇はいつもより苦くて、ケンジの温もりも今はどこか切なくて…。
「……。」
…向き合わなくちゃ。
何に、なんて口には出さないが、ずっと避けていた事実に向き合う時が来た。
それだけは、確かだ。
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