…8。
何となく、この感情に心当たりがないわけじゃない。
でも、それを肯定するわけにもいかなくて…。
少しだけ赤くなった顔でケンジを見た。
すると、「全部バレバレだよ」という風にこっちに歩み寄ってくる。
「あ…」
…どうしよう。
動けない。
それでもなんとか視線を下げると、目線の先のケンジの足は、もう触れるくらい近くにあった。
「コウジ。」
肩が揺れる。
ただ名前を呼ばれただけなのに。
何をしてくるの?
と、ちょっとだけ期待している自分が嫌だ。
だけど、当たり前だけどそんなわけなくて。
「カレー、分けるから座って。」
「……。」
ただ、邪魔だとあしらわれただけだった。
…うわっ!俺ってチョー恥ずかしい!
あまりの勘違いに悶死しそうだ。
カチャカチャと食器を鳴らして夕食が並べられていく中、何も出来ずに一人座り込んで落ち込んでいる俺は間抜け以外の何者でもない。
…恥ずかしい!恥ずかしい!!
そんな俺に文句のひとつも言わず、黙々と用意するケンジも本当は呆れている事だろう。
部屋は汚いし、冷蔵庫には何も入ってないし、こんなだし…。
…俺ってカッコ悪い。
「あ。」
台所でケンジが小さい声を上げた。
…なんだろう。
落ち込みから少しだけ浮上して視線を送ると、
「…ごめん。」
ばつの悪そうに何故かケンジが謝ってきた。
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