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…7。




「た、ただいま。」


…くそっ。なんか胸がざわつく。


二度目になる挨拶に、律儀にまた「ん」で返したケンジは、うっかり見落としそうなほど自然に冷蔵庫から缶チューハイを取り出した。


「遅くなってごめんな?」
「んー。」


カシュッ。

炭酸の独特な音を立てて缶を開けたケンジは、そのまま缶を口へあてて、


「ちょっ、お酒は20歳になってから!没収!」
「……。」


寸でで取られたチューハイを物欲しそうに眺めながら、仕方ないと冷蔵庫から麦茶を取り出した。



「つーか、一人で掃除したのか?あんまり綺麗になってたからびっくりした。汚かっただろ?」

奪ったチューハイに口をつけて一気に飲み干してから、自分でも早口だったと思う。


「しかもいい匂いするんだけど!カレー?ケンジが作ったの?美味そう!」


こんなにも兄の帰りを待ち望んでくれていたのかと、自然と笑みが浮かぶのは当たり前だろ?

ちょっと照れくさい不思議な感覚にケンジを見ると、

「ん。」


心から嬉しそうに、はにかんだ笑顔を浮かべていた。



ドクンッ

…あ、まただ。
またあの感じだ。


この間のアイスで広がった甘い痺れが、また胸の辺りで疼き出していく。


…なんだろう。


苦しいような、温かいような。力が抜けてくような…。


正体不明の疼きは、確実に以前より強くなっているみたいだ。




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あきゅろす。
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