…6。
………
バイト上がりで煙草臭くなった髪を掻くと、灯りのともる自宅の前で立ち止まった。
手にはコンビニで買った弁当。
一応、機嫌直しにケンジが好きだったプリンも入っている。
…だって、もう10時半だぜ?
バイト中、
ケンジに何も伝えてなかった事に気付いた俺は、本当は2時あがりだったバイトを頼み込んで10時に変えて貰ったのだ。
そういえば、帰る時間伝えてない、とか。
冷蔵庫の中、食べ物入ってたっけ?とか…。
ブラコンと言われても構わない。
空腹で馴染みのない場所に一人きり…。
心配になるのは当たり前だろ?
…元はといえば、逃げるみたいに出てきた俺が悪いんだし。
いくら図体がデカくなろうと、いくら茶髪でちょっとヤンキーみたいでも、
…ちょっと、態度がアレでも…。
5つも下の大事な弟なのだ。
しかも、8月末まで一緒に暮らすとなると、ここは何よりご機嫌をとっておくに限る!
なんて、色んな事を正当化して胸の奥にくすぶる小さな違和感を押しやると、テンション高めで部屋のドアを開け放った。
「ただいまー!」
…て。あれ?
ベタだが、どうやら部屋を間違えたみたいだ。
だって、埃まみれな筈の部屋は驚くほど綺麗で、山積みだった洗濯物も、置きっぱなしになってた空き缶だってない。
しかもカレーのスパイシーで食欲をそそる香りまでしちゃっている。
「…んー。」
一度部屋から出ようかと本気で考えた俺に気付いてか、また返事とも何とも言えない一言を返してきたケンジは、さっきまで風呂に入っていたみたいだ。
湯気でも出てそうな肌はほんのりピンク色で上半身は裸。
タオルを頭から掛けた、どこかで見たような格好で、冷蔵庫を漁っていた。
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