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『佐藤くんと鈴木くん』
…2。



「へへっ。」

不謹慎ではあるけど、顔がゆるみそうになるのはしょうがないよな?

だって、佐藤んち初訪問だもん。
何度が家の前までは行ったから、場所はバッチリ覚えてる。

カサ…、と揺れるナイロン袋には、田舎の祖母ちゃんが送ってくれた林檎。

お見舞いもちゃんと持ったし!
冷風で顔や手は冷え切っていくが、心はドキドキわくわくだった。



自己最高速度で自転車を飛ばし、佐藤の住む2階建てアパートに着いた。

佐藤は母親と二人暮らしで、このアパートの2階の端の部屋に住んでいる。
軽やかな足取りで鉄階段を昇り、悴む手で呼び鈴を鳴らした。


ピンポーン


あっ!
…どうしよう。
今更かもしれないが、佐藤母がいるかもしれないじゃん!

おばさんには初対面だ。
何とも言えない緊張感が鼓動は早めたが…、


「……。」


「………。」

…あ、れ?
誰も出て来ない。


数分が過ぎても反応のない中の様子に、嫌な予感が脳裏をよぎるのは当たり前だ。

「佐藤?」

倒れてるのかもしれないと、ドアノブを回すと、
不用心にもほどがある。
難なく回ったノブには、鍵が掛かっていなかった。


「お邪魔します…。」


入ってすぐに台所。
靴を脱ぎ、その先の磨り硝子に手をかけた、

「さとー…?」

…いない。



「佐藤…いないの?」

…いた。

安堵の息をもらしたのは、隣の部屋で寝息を立てている佐藤の無事な姿を見つけたから。
…決して部屋を間違えたかも、なんて思ったわけじゃない。うん。断じて違う!



「佐藤…大丈夫?」

寝ている事は分かっていたが、そばに座り少し汗ばんだおでこに触れた。

…熱い!

高熱とまではいわないが、確実に平熱ではない体温だ。


…どうしよう!
えっと……あれ?看病って、どうするんだっけ?
頭冷やして、汗拭いて?


パニクりながら、とりあえず服の袖で汗を拭き始めた。
おでこを拭いて、首を拭いて…、
頬に張り付いた髪を撫でると、


「………何、してんの?」
「わっ!」


かすれているけど聞き慣れた声が、掴まれた腕の下から聞こえた。




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