『密室』 遊園地の締めは観覧車、 そんなの誰が決めたんだよ…。 福引きで当てた、遊園地のフリーパスペアチケットを相手がいないからって理由で誘ってきたのはアイツだった。 「いいよ。」 だって遊園地だ。 男二人ってところはちょっとアレだが、断る理由もない俺は二つ返事で承諾した。 ジェットコースターにバイキング…、 今日は朝から閉園間際まで散々遊びまわって、 『最後はやっぱり観覧車だよな』って、そんなノリで大観覧車に乗り込んだんだ。 「…」 「……」 さっきまではあれほど騒いでいたのに、急に黙り込んでしまったアイツは、ただジッと夜景を見下ろしていた。 「…綺麗だな。」 「んー。」 外は確かに光に溢れていて、ロマンチックではある。 「…遊園地の締めは、やっぱり観覧車だな。」 やっと4分の1程昇ったあたりでアイツが言った。 「まあ、ね。」 正直、カップル限定な気もしたが素直に頷くと、薄暗い中でアイツが笑った気がしたんだ。 「…じゃあさ、観覧車といえば?」 …観覧車? 首を傾げてアイツを見た。 「!」 いつの間にか、この薄暗さでもはっきりわかる程近くにあったアイツの顔が、 見た事もない表情で言ったんだ。 「密室。」 心臓が揺れた気がした。 大観覧車が一周するまで20分。 最低でも後10分は終わらないこの狭い密室で、唇にかかるアイツの息に為す術もなくゆっくりと目を閉じた。 [次へ#] |