『ショート寸前』 ちゅっ。 「!」 唇が優しく触れるだけの、 そんなキスをしてきたのは、予想外にお前からだった。 「なんだよ…。」 目が点のまま固まってしまった俺に不満そうにそう言うと、真っ赤な顔で俯いた事でやっと我に返った。 「なっ!、あっ!」 「…ごめん、もうしないよ。」 焦り過ぎた態度があらぬ誤解を生んだようだ。 傷付いた顔でそう言ったお前を、もう無我夢中で引き寄せて、 「わりっ!…違うんだ…」 うろたえている俺はだいぶ格好悪いだろう。 「嬉し、かった…」 恥ずかし過ぎて真っ赤になりながら、そんな顔を見られないように更にキツく抱き締めると きゅ。 応えるように背中に手を回してくる仕草にノックアウト寸前だ。 「ちょっと、待て!」 ヤバい位に早くなる動悸に離れると、首を傾げて眉を下げて、ただこっちを見る仕草まで俺には愛しすぎて… 「…つーか、これ以上は、無理。」 本当、マジで。 「なんで?」 そう呟いた口がゆっくり近づいて来て、 トスン、 後退りした俺は、ソファーに躓き着地した。 「逃げないで。」 逃げたい訳じゃない。 本当はこの瞬間を心待ちにしていたんだ。 「…マジで、止まんなくなる…」 シャツの襟元から覗く鎖骨と、男のクセにヤケに色っぽい唇が全力で俺を誘っていて、 「い い よ ?」 一音一音、 丁寧で綺麗に紡ぐ唇が、吐く息ですら自分のものにしたくなったんだ。 「止まんねぇ…」 獣みたいにシャツを弄り聞いた俺の耳に、 「うん…」 微かなお前の声がした。 [*前へ][次へ#] |