絶対可憐な版権小説
『trick and treat!』葉×真木
「はい。」
葉に笑顔でその手を差し出されて、真木は完全に頭に?マークを浮かべていたが、勿論それは眉間に刻まれた皺を深くしただけだった。
「……。」
「はい。」
…だからその手はなんなんだ。
舌打ちが出そうだったが、なんとか抑え込むと、
「……なんだ。」
渋々意味を尋ねてみた。
「ちょーだい。」
さっきよりも更に笑顔は眩しくなったが、結局答えはわからない。
「…何を、だ。」
溜め息混じりに、また問うと、
「お菓子。」
当たり前のようにそう言った。
…お菓子?
「俺が持ってるわけがないだろう。」
生憎常備しているのは胃薬ぐらいだ。
「そう。」
いつもより少し低い声がして、出していた手が真木の手首を掴んだ。
…嫌な予感がする。
「離っ!」
とっさに退いてみたが、葉はぴったりと引っ付いたまま離れようとはしない。
しかも、股の間に足を差し込まれ、後ろのテーブルにそのまま追い詰められた。
「何をする気だ…!」
口調に反して語尾が弱々しいのは、何となくこれから起きる事の予想がつくから。
…決して同意はしてないのだが。
「今日は何日?」
「10月、31日…っ…」
空いていた方の手も掴まれ、葉が手のひらに唇を寄せた。
「そ。…だから、trick or treat?」
「とりっく…?」
「お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうよ?」
…そうか!ハロウィン…
気付いたところで今更遅すぎる。
既にテーブルの上に寝転がされた真木は、いつの間にか外されたネクタイで両手を縛られ、シャツのボタンはへその下まで外されている。
首筋を唇が這って、ピクリと揺れた。
「このっ!」
感じてしまった事の羞恥から髪で拳を作ると振り上げた。
しかし、
「…さん、…き。」
ボソッと囁かれた言葉にそれを止めて、“駄目?”と甘えるような視線に、我ながら流されてるとわかっている。
「……」
「…ねぇ、」
「……お菓子をやっても止めないクセに。」
バレた?
と言わんばかりにイタズラっぽい笑顔を浮かべて、葉の息が首筋にかかる。
ゆっくりと下に降りていく感覚に、静かに目を閉じて、
『…真木さん、好き。』
甘い言葉が胸に広がっていくのを感じていた。
…end?
2009/10/31 *緒神
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!