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絶対可憐な版権小説
『発熱時のお約束』兵×真*



ピッピッ

電子音がなり取り出した体温計を見た真木は、すぐにそれを無造作に投げ捨てた。


…八度七分か。
道理でだるいわけだ。


溜め息を吐き、だらしなくソファーに腰をおろすと、
キッチリと絞められたネクタイを緩めて深く呼吸してはみたが、ヤケに息苦しく感じる。


忙しい時に限ってこんな状態になる自分に腹を立てはみたが、だからと言って何かが変わるわけじゃない。


…体調管理は大事とか、いつも言っている立場の俺がこれでどうする。


少しだけ目を瞑ると、そのまま意識が遠のいていきそうだ。


いや、もう意識はなかった。
あるのは感覚だけ。


ふわっとしたこの感触は何だろう。

…凄く気持ちがいい。

それと同時に鼻孔をくすぐる慣れ親しんだ香りに微笑むと、更に意識は深いところへと落ちていった。




ヒヤッとしたものを額にあてられて目を開けると、自分の額を合わせて検温していたのは少佐こと兵部京介だった。


「少、佐…?」


声がかすれて上手くでない。


「……」

黙ったままの京介は真木から視線を逸らすと、丁寧に絞られた濡れタオルを額へと置いた。


どうやらソファーでそのまま眠ってしまったのを兵部に運ばれたようだ。



真木が寝ているのは、丁寧に整えられた兵部のベッド。
その傍らに座っているのは、不機嫌そうな兵部。



安易に体を壊したその不甲斐なさに、どうやらご立腹のようだ。


「…すみません。」

「別に真木は悪くないよ。
…怒ってるのは、こんなになるまで気付けなかった自分にだ。」


真木の顔が、少し赤くなったのは熱のせいではない。


その表情に満足した兵部が口元を綻ばせた後、おもむろに何かを取り出して見せた。


「?」


そこに在ったのは銀色の包みに密閉された、弾丸にも似た形の物体。


「熱、高いよ?
…早く下げなきゃね。」

その顔にはさっきの不機嫌な表情はなく、既にサディスティックな笑みを浮かべた兵部がゆっくりと布団の中に手をすべらせてくる。

「なん、ですか…?」


もちろん、それがどんな物なのか分かってはいるが、それを使うという事を納得しがたい状況だ。

「何って?座薬に決まってるだろ?」

…やっぱり。


赤かった顔が途端に青くなり、その顔を見た兵部が更に嬉しそうな顔をした。


「さぁ、出して。」

「………無理です…」


…そんなに目を輝かされても困る。


視線を逸らして逃げるように起き上がると、それを阻止するように手を引いて押し倒した。


「…いけないな、真木。」

「大丈夫ですよ。こんなもの動いてればそのうち治ります。」

しかしその頬は赤く、吐き出される息は熱い。
その体温は既に九度は軽く越えている事だろう。


「……分かった。」

やけに物分かりのいい兵部の返事に安堵したが、それとは裏腹にその拘束は強くなっている気がする。

まっすぐと真木を見た兵部は、そのままゆっくりと唇へと近付いていった。


「駄目です」
「!」

弱々しく手のひらで唇を隠すと
「…移りますから。」


しかし真木の制止は虚しく、両手を拘束される形で破られた。

「真木のだったら、移っても構わないよ。」

「!」

嬉しそうなその表情は真木を困らせて楽しんでいるようだ。


「動いてるうちに治るんだろう?」

「そういう意味じゃ…」

否定の言葉は最後まで発する事が出来ずに兵部の唇に吸い込まれた。


「仕事の事なんて、すぐに忘れさせてあげるよ。」






「はぁ、はぁ…んっ」

もう何度も口だけでイカされて、身体は触られるだけで過敏に反応していた。


「あっ…ん…」

胸の突起物に歯を立てられて、つい声を出してしまった事を後悔しながら唇を噛むと、


「…別に出してもいいのに。」

優しい笑みを浮かべてそう言った兵部はさっき出したばかりの真木のモノをまた口に含んだ。

「あっ!…もう…ダメ、です…」

これ以上、そこばかりを攻められてしまえばどうにかなってしまいそうだ。

「何が、どう“ダメ”なんだい?」

ちゃんと言ってくれなきゃ分からないよ
と、それでも兵部は舌を動かし続けている。


どうやら真木の口から言わせる気のようだ。


「…おねがい、…はぁっ、します…」


身をくねらせて何とか躱すと、恥ずかしげに視線を向けて後ろを向く真木は、艶っぽくてなんともそそる。


突き出されたそこは、さっきからヒクヒクと可愛い動きを見せて、必死に兵部を誘っているようだ。

あまりの可愛さに顔を近付けると、ゆっくりと舌でなぞってみた。


「! んんっ…!」

長時間続けられた愛撫でも一度も触ってもらえなかったそこは、たったそれだけでもイキそうになる程、もう限界だった。


既に今まで出されたモノでドロドロで、舌と指でゆっくりとほぐしながら真木の負担を少しでも減らそうという行為は逆効果でしかない。


多分、兵部はそれもしっかり分かっていて続けている。


上半身は既に起こすことも出来ず、舌や指の動きと一緒に出される声は、もう我慢なんてものはなくなっていた。


「あっ!…はぁっ…あ、ん…京、介…さんっ」


時折呼ばれる名前はいつもの
『少佐』ではなく、昔のように『京介さん』に戻っていて、
鼻から抜ける声で呼ばれる度に激しくなる兵部の指の動きは、中の締め付けだけでなく股間のそれもビクビクと揺らした。

それは、次第に腰の動きへと変わっていき、それに気付いた兵部は、満足げに笑って言った。

「指だけで我慢しちゃうの?」


腰を動かしていたのは無意識だったのだろう。
激しく上下を繰り返しながら掠れる声で否定していたようだが、この状況では指だけで終わってしまいそうだ。


…正直、それでは面白くない。

尚も激しく動き続ける腰から逃げるように指を抜くと、

「あぁっ!」


切なそうな声を上げた真木が、どうしてと兵部を見た。



「さて、僕にどうして欲しいんだい?」

「…え…?」


「どこに何を入れて欲しいのかちゃんと言うんだ。」


どうやら何としても真木の口から言わせたいらしい。

その事に気付いた真木は、恥ずかしげに下を向いて黙ってしまった。


欲しくないわけじゃない。
むしろ今すぐに入れて欲しいに決まっている。


「…いじわる、んっ!…ですよ…」


途中、背中をなぞられて仰け反りながら最後の意地でそう言うと、観念したように頬を赤らめさせた真木が言った。


「……きょうすけさんを、俺の、中に…ください…っ」


「…はい。良く言えました。」

持っていたコンドームを慣れた手付きで装着すると、無数のキスを背中に浴びせながらゆっくりと奥まで挿入した。


「あぁ!…きょ、すけ…さ…ぁ!」

背中が弱い真木は、入れる時触ってやると身を捩らせて鳴く。


中は溶けそうなくらい熱くて、兵部のそれで一杯になっていても尚、貪欲に求めてくる。


「…気持ちいい?」


激しく腰を動かしながら、真木に声をかけてはみたが、

「あっ!はぁっ!…あっ…」


その動きに合わせて出るのは喘ぎだけで、もう言葉にも出来ないらしい。


中が、今までと違う動きを見せる。
どうやら勝手に一人でイクようだ。


だけどそれを兵部が許すわけもなく、強く股間を握り締めて止めた。


「!?」

「駄目だよ。一人でイクなんて。」


ぐるっと挿したまま身体を回転させて体位を変えると、その無理な動きの所為で声にならない声を放つ。

「…っ、…ぁ!」


「今日は真木のイク顔を見ながらするって決めたんだ。」


理不尽な事をいい、腰を動かした。

深く…
「あぁっ」

浅く…
「んっ…」


その度に漏れる吐息にニヤつきながら、中をかき混ぜるように突き続ける。



何度それを繰り返して、
何度も寸前で止められ虚ろな目をしていた真木が兵部の名を呼ぶ。

「きょ…すけ…、さぁン…」


その声に満足した兵部が、高く上げられた足を舐めながら囁いた。


「イっていいよ。」


腰の動きと一緒に手を動かすと、中が動き合図を送ってくる。

それに合わせて一番感じる部分を突き上げて、

「あぁああぁっ…!」

ビクン
ビクン…!

やっと解放された真木は、ぐったりと布団に身を預けて気絶するように眠ってしまった。





「ふふ。」

綺麗に直したベッドに真木を寝かせ直すと、そっとその髪を撫でてみた。


この様子では朝まで起き上がる事も出来ないだろう。


「…まったく。あんまり心配かけないでくれよ。」


小さな寝息を立てた愛しい人にキスをおとすと、真木の代わりに仕事をすべく部屋を出た。





その後。


「ゲホッ、ゲホッ」

咳をしながらベッドに横になった兵部の横で、林檎を丁寧にうさぎの形に切りながら真木が無言で座っている。


「…たいした事ないよ。」

「……」

「本当に大丈夫だから。」

「…四十度近い熱があるのが、“たいした事ない”んですか?」


子供のように拗ねながらそういう真木に微笑むと、

「動いてるうちに治るよ。」


林檎を向いていた手を止めてため息を吐いた真木が、ゆっくりと兵部へと近付いていった。



end。

2008/12/13 *緒神


※ブログではつけてませんでしたが、こちらではゴムを装着させてます。

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