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絶対可憐な版権小説
『男のロマン』



「真木…。」

「…何ですか?」



不審な空気を感じて、少し後退りしながら出来るだけ視線を合わせないように返事をしてみた。




「猫耳を作れ。」



……え?


我が耳を疑い、聞き間違いだと祈りながらも念の為もう一度聞き返してみる。



「……何、ですか…?」


「だ・か・ら!猫耳だよ。」


まるでこちらが悪いかの様に眉をひそめて、不機嫌にそう言い放つと、当たり前の様な顔をしているこの人は正気だろうか。


学生服のコスプレの他にそんな趣味まであるのか?



「…」
「……」




しばしの沈黙の後、


「…お断り致します。」



きっぱりとした俺の言葉にこれでもかと言うくらい声を荒げた。



「何故だ!!」


…さて、何故でしょう。



溜め息を吐いた俺を見て神妙な顔をした少佐は、一度と大きく息を吐き、かも自分が正しいかのように口を開いた。


「…真木。君は“萌え”というものを知っているか?」

「……“萌え”、ですか?」


何となく聞いた事はある。ただ俺にはあまり関係のない単語だったという認識しかないが。



「今ちまたでは、その“萌え”がブームらしい。」


「…はぁ。」


気のない返事をしながら、“萌え”の概要がよく分からない俺には、それと猫耳がなんの関係があるのかさっぱり分からない。

しかも、若干ブームに乗り遅れている気がするのは気のせいだろうか。




「そこでだ!
破壊の女王を手に入れる為に、真木!
…お前に白羽の矢が放たれたと言う訳だ!!」


「!?」



“破壊の女王”の名を出されて少佐を見ると、シリアスな顔でゆっくりと頷いた。



…破壊の女王。


もし、猫耳一つで彼女を、そして彼女達を仲間に引き込む事が出来れば…。


これは、凄く重大な任務かもしれない。



こくん。


目を合わせ頷くと、少佐がおもむろに何かを取り出した。

「?」




間。




太股の中ほどまでしかないヒラヒラのスカートに、その20cm程下に控えるニーソックス…。
レースとフリルがたくさん付いたエプロンが、動く度にひらひらと揺れている。




「…少佐…これは…?」



炭素で作った猫耳についでに尻尾までしっかり付けて、無数のフラッシュの中に一人佇んだ。



「任務だ!」



…本当に、この格好にそんなに重要な意味があるのか。


一通り写真撮影が終わった後、いつの間にかカメラを持って撮影に加わっていた葉が口を開いた。



「…でも破壊の女王って、ナイスバディの美女にしか興味ないっスよねぇ。」


「!!」
「馬鹿!ばらすな!」




…騙された!




ふつふつと沸き起こる怒りの炎に胸を焦がしながら、少佐に目を向けるといつの間にか姿を消している。


「……」

「…あれ?」



代わりに逃げ遅れた葉に向き直ると、


バッシーンッ!

「なんでぇ!?」


絶妙な捻りを加わった見事な炭素アッパーを食らった葉が、無惨にも弧を描いて空中を舞った。


end。

2008/10/20 *緒神

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