…2。 一定距離を取りながら拓己に付いて歩く俺は、さながらストーカーのようだと思う。 声を掛けても無視され、隣に並ぶと歩調を変えて距離をとろうとする拓己に苛立っていると、ふと拓己が遠くに視線を投げた事に気が付いた。 「?」 視線の先に見えたのは公園のベンチに座り楽しそうに笑っている良く知った二人で、端から見てもラブラブオーラを放っている氷吾と勇気だ。 背を預け寄りかかる勇気を肩で支えた氷吾は本当に嬉しそうで、それに気付いているのか何か言われたのか真っ赤な顔をした勇気をクスクスと楽しそうに見つめている。 ここが外だとまるで気付いていないような甘ったるい雰囲気は、こっちが当てられそうなくらいだ。 それでも幼なじみの幸せを妬む感情は生まれず苦笑いして拓己を見ると、今にも泣き出しそうな顔で俺を見ていた拓己に気付いた。 「!?」 視線が合った瞬間、逃げ出すように走り出した拓己を追い掛けたのは無意識。 頭の中では、今のが何だったのかと必死に考え、同時にわからない苛つきが怒りに変わり、沸々と加虐心を煽っていく。 「拓己っ!」 止まれと力を込めて呼んだ名前は更に拓己の速度を上げ、元々あった距離と入り組んだ裏路地の所為で結局拓己を見失ってしまった。 …くそ! 多分俺は今酷い顔をしていると思う。 能面みたいに貼り付けていた笑顔の仮面は剥がれ落ち、怒りに眉を寄せ、悔しさに噛んだ唇からは仄かに血の味が滲んでいる。 他の人間ならなんとも思わない感情はたった一人、拓己の前ではあっさりと覆され、どうしようもない独占欲が身体中を駆け巡っている。 「…逃がさない…」 ポツリと呟き空を睨んだ。 やっと手に入れたんだ。 絶対に逃がさない。 もとより手に入れた瞬間から、どんなに拒絶されようが泣き叫ぼうが放してやるつもりなんて皆無なんだ。 一気に怒りに沸いた頭がスッと冷え、凄く冷めた表情を作った。 お得意の笑顔ですら作らずに、拓己の家に向かって歩き出した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |