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…34。





「し…てない。」


俯いてそうもらす声は、微かに震えてて、
そんなに辛いなら答えなきゃいいのに。
なんて、自分を棚にあげてみる。


「…じゃあ、氷吾と何があったの?」


本当はわかってる。

多分、髪を黒に染めてきた氷吾を見て苛ついたのだろう。


みんなが変わろうとしている中で、一人だけ退行していく氷吾が腹立たしい。

わからなくもないが、だからと言って勇気の想いを勝手に言うわけにもいかなくて。


両想いの二人が、もどかしくて辛い。
自分の所為だと思い詰めてるから尚更に。


それが、
『勇気も、氷吾も大好きなんだっ…!』
その言葉に繋がっていく。



「はぁ。」

無言のままで外を眺める拓己に自然と溜め息がもれた。


「いいけどさ。…拓己は二人がそうなったらどうするわけ?」


するのは“祝福”?
それとも“嫉妬”?

なんだかんだ言って、二人の曖昧な距離に助けられてるんじゃないの?


今ならまだ僅かでも付け入る隙はあるかもしれない。
でも、付き合いだしたらそれが無くなる事くらいわかってるだろう。


「………大丈夫だよ。」


どこら辺が?と聞きたくなるくらい辛い顔を浮かべた拓己が、


「大丈夫…。」
「……。」

「…おめでとうって、ちゃんと言える…。」
「そうか…。」


無表情で呟く拓己に頷いて、それ以上俺は何も言わなかった。


「……」
「……」


開けられた窓からじわりと滲む雨の匂いに、いつの間にか曇りだした空を見上げる。


「雨、降りそうだね。」
「……んー。」

とん。


返事と共に、肩に頭を預けてきた拓己を振り払いも抱き寄せもしないで、


…嘘吐き。


チャイムが鳴るまでの間、その重みを感じ続けた。




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