…10。
「…見てた…?」
何を?俺がセックスしてんのを?
「……。」
…違うよな。
見てたのは、俺、やんな?
かあぁと耳まで熱くなって、その事実に口元を押さえて。
つまりそれって、そういう事?
俺が直文に気付く前から、アイツは俺の事を?
「…ありえへん。」
ホンマ、ありえへん。
さっさと追い掛ければいいのに、馬鹿な俺はその場にしゃがみ込んで目を閉じた。
「はぁー…」
…だって、今マジ感動してる。
すっげえ驚いた。
別に「好き」なんて言われ慣れてるけど、いや、まず「好き」じゃなくて言われたのは「嫌い」なんやけど。
今まで言われたどの告白より胸の奥にズドンときた。
「つーか、マジ嬉しいんやけど。」
呟いて、自分でもわかるくらい顔が熱くなっているのに気付き口元を緩ませると、重かった腰を上げた。
もちろん直文を追い掛ける為だ。
今すぐ直文を抱き寄せて、マジだって囁いてキスしら、また真っ赤な顔で俺を見てくれる?
だって両想いなんやろ?
直文も俺が好きなんやろう?
多分人生でこんなに必死に走るのなんて、小学生の時にリレーのアンカーになった時以来やな。
息を切らして汗を流して…。
でも、
いくら探しても直文を見付ける事は出来なかった。
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