…13。
「…じゃあ、最後に朝比奈夕陽くん。」
「……」
無言のまま立ち上がろうとしない朝比奈に、一瞬の内にクラスがしんと静まり返った。
…あれ?あれれ?
なんだ?ちょっとこれ、マズくないか?
さっきまでの和やかムードはどこ行った!
え?朝比奈ってこういうポジションなの?
もしかしてマジ一匹狼不良ポジなのか?と嫌な予感が頭をよぎり。てか、ここまで順調だった初授業をまさかお前がぶち壊すのか!?と内心焦ってしまう。
…だっておかしい。
過去二回ほど会った朝比奈は、そりゃあ怖かったけどそれでも驚くほど綺麗に笑ってて。
どもりまくった俺にノリ良くツッコミを入れてたし、面倒見も良さそうだったはずだ。
もちろんファイルにも、ちょっとさぼり癖があるとは書いてあったがそれくらいだ。
特に問題があるようには書かれてなかった。
「…朝比奈、くん?」
不安になってもう一度名前を呼ぶと、思いっきり顔をしかめて睨み付けられ、思わず「ヒィ!」と竦み上がるかと思った。
そこはなんとか耐えたけど。
「……」
ガタッと音を立ててダルそうに椅子に背を預けた朝比奈は、そのまま教室から出て行くのかとも思ったが、そんな素振りは見せないでジッと俺を見つめている。
…えっ?えぇ!?
何、どうすんの?どうすればいいのさ!
「…えぇっと…」
依然と無言のままの朝比奈にガヤガヤ教室が騒がしくなって、もうスーツの中は変な汗でびっしょり。
ヒソヒソ話を始めた生徒達から「朝比奈怖い」だの「なんでFじゃねぇの?」だの聞こえてくる。
うん、俺もそれ思いました。
現在進行形で思ってます!
ちなみに「格好いい!」とかチワワ系の囁きも聞こえるけどそれはスルーだ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!