…32。 いやいやいや、多分気のせい。錯覚。気の迷い。 俺はそんな事でほだされないぜ! やっぱり断ろうと決意すると、俺を見つめていた朝比奈の顔が「食べないの?」とばかりに曇った気がした。 「〜〜〜っ!」 …くそぉー! なんでこんな事を! だってさ、仕方ないだろ。 これ断ったら動物虐待な気分になりそうなんだもん。 目をキツく瞑って口を開けると、ぱくりとわらびを口に含んだ。 もう恥ずかしくて恥ずかしくて、顔から火が出そう。 美味いはずのわらびの味が今は全然わからないんだから重症だ。 大体たまに犬化するのはなんで?動物好きの俺が弱いのを知っての狼藉か!それとも単なる俺の妄想? とりあえず俺は、猫より断然犬派だ! BLだって気まぐれ猫受けより、わんこ攻めが好きですけど何か!? 「美味い?」 ごっくん、と飲み込むと朝比奈に向けた顔を逸らした。 「…んー。」 …だって何その顔。 スッゴい嬉しそうじゃん! 眩しい綺麗な笑顔は直視しづらい。 別にそんなつもりは無いはずなのに、うっかり胸がドキドキしちゃうんだもん。 本当、そんな顔しないで欲しい。 赤くなっているであろう顔と、どうにも恥ずかしい空気を誤魔化す為におにぎりにかぶりつくと、朝比奈も同じように食事を再開してくれた。 あー、良かった。 それでも、中々羞恥が引かなくて、何でもいいから会話をしなきゃ、とか変な使命感が生まれそう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |