…9。
…あれ?
なんだこれ?
例えるなら耳をぺたりと下げた犬みたい。
…教室とのギャップありすぎじゃないですか?
おかげでチクチクと不要な罪悪感が胸に突き刺さるんですけど!
シュンとした雰囲気に段々と怒りが萎んでいく俺は、「お前の怒りはその程度だったのか!」と自分に叱咤したい。
絆されるな!俺!
さっきまでのもやもやが何故か一気に霧散してしまって、かわりに自分がイジメているような気さえしてくるとか。
本当、マジ勘弁してくれ。
「あ、いや…」
思わずそうもらして視線を泳がせながら、どうすればいいかわからなくなってオロオロとしてしまう。
こう、目の前の大型犬の頭をワシャワシャと撫でまくり、「怒ってごめんね」とか言ってお気に入りのビーフジャーキーとか上げたくなるよ、こんちくしょう。
「……」
微妙な沈黙のあと、ずっと感じていた視線が不意になくなってふぅと息を吐くと、目線だけをこっそりと朝比奈に向ける。
背中を向けた朝比奈は俺から奪ったハンカチを水で濡らしてて、再びこっちに向き直るとそっとそれを手渡してきた。
「はい。」
「……。」
…冷やせって事だよな?
無言のままおずおずとそれを受け取って、促されるように腫れた目蓋に押し付けた俺は、さっきまでとは違う意味で混乱していると思う。
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