…13。
「もう無視しないよ。」
思いの外に優しい声色になった。
まさか俺からそんな事を言われるとは思っていなかった朝比奈は、なんだか照れ臭そうに目を逸らしたした後、
「…ん。」
小さく返事して俺の隣に腰を下ろした。
「……」
「……」
沈黙が流れる中、それでも居心地が悪くないのは朝比奈の雰囲気の所為かもしれない。
体温が伝わるかどうかの絶妙な位置で腰を落ち着かせる朝比奈は、何も言わないけどなんだか優しくて温かい。
さっきまで確実に嫌な存在だったはずなのに、そんなの忘れそうなくらい自然な空間が不思議で。
…変なの。
例えば昔から知り合いだったみたいな、そんな感じだ。
…多分、距離感が丁度いいんだろうな。
もし俺が朝比奈と同じ学生だったら、多分きっと友達になっていたと思う。
学校帰りに買い食いしたり、たまに授業をサボったり、他愛のない話で盛り上がったりしてたかもしれない。
…まあ、実際は俺は教師で朝比奈は生徒だけどさ。
「……て、あれ?」
ぼんやりとそんな事を考えていた俺は、ふと思い付いた疑問に首を傾げた。
それは物凄く今更な事なんだけど…。
なんで、朝比奈はここに来たんだろう。
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