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…1。





「うぅ、グズ…」



ズビズビと鼻を啜る音が、誰もいない部屋に響いていた。


無限に捨て台詞を残して生物準備室に逃げ込んだ俺は、幾らか治まったもののまだ滲んでくる涙を拭いながらしゃっくりをあげている。



普段涙目になることはあっても泣くことなんて殆どなかった俺は、容赦なく目蓋を腫らしてとんでもなく不細工な顔になっている自覚がある。

本当、もともと平凡顔なのに平均を自ら下回るとか俺ってバカ。



…大体、なんで俺は泣いてるんだろう。


ズキズキと痛む頭で考えた。




もともと俺は、泣くのが嫌いだ。

「男なら簡単に泣くな。」なんて別に無限の台詞じゃないけど、子供の頃は泣き虫だった俺はよく父に言われてた。

教師だった父は堅物で厳格で、女々しい俺をよく叱った。
もちろんすぐに泣き出してしまう俺は、時には鏡の前に立たせて腫れた顔がどれだけ不細工でみっともないかを説かれた記憶だってある。
だから泣くのなんて嫌いだったのに…。


それなのにここに来てから泣き過ぎだろ。


せっかく必死に我慢して泣き虫は直ったと思ったのに。
そりゃあ、…少し泣いちゃうことはあったけど、どんなに悲しくたって大泣きなんてしなかったのに。


だからこんなに泣いたのは“恥”でしかなくて。
いつまで泣いてるんだと頬を張って活を入れると「ふぅ」と大きく息を吐いた。



「…ださ。」


部屋の隅に設置してある水道で顔を洗い、ポケットから取り出したハンカチで顔を拭った。

ふと触れた髪はいつの間にかほとんど乾いてて、どんだけ泣いてたんだよと我ながら呆れてしまう。






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