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…18。





「別に実践しなくても大丈夫ですよ。次は口頭でお願いしますね?」


大人の余裕を見せるように、「これぽっちも気にしてません」と笑顔を見せる。
目が合った朝比奈は、少しだけ顔をしかめて面白くなさそうだった。
うん、面白くないのはこっちだから。





「…では、次の生物の時間に会いましょう。」


内心「もう二度と会いたくない」と、とんでもなく落ち込みながらそう言うと、クラス委員に号令をかけさせ、何気ない顔で出口に向かった。





「先生ー!」
「……はい?」



不意に声を掛けられて、肩が揺れなかったのは奇跡だと思う。

話し掛けてきたのはアイ・ラブ・サッカーの鈴木くんで、隣に座る森川くんが「止めろよ」と小さく窘めていた。
そのまま是非止めてください。




「朝比奈くんのちゅーテクどうでしたかぁ?」



森川くんの(爪の垢程度の)努力の甲斐なく面白がった鈴木くんの言葉に、さっきまで顔をしかめていた朝比奈が僅かに口元を緩ませた。



…本当、ガキだなお前。
マジむかつく。



キョトンとした表情を浮かべた俺は、次に「ああ」と微笑むと、



「…そうですねぇ。
朝比奈くん、是非みんなにも披露してあげたらどうですか?
実践で!ね。」



“実践”を強調すると、チワワ系の生徒の何人かが目を輝かせ「キャー!」と嬉しそうな悲鳴を上げ朝比奈に集まりだした。

さっきまで緩ませていた口元を今度は嫌そうに歪めて、明らかに「お前何言ってんだ!」という顔を青くした朝比奈に「ざまぁみろ!」と心の中で返しておく。

チワワ系だけじゃなく、興味本位のどっから見てもタチっぽいのが混ざってるから尚更だろう。



今度こそ踵を返して教室を出ると、午前授業で終わりの為ほとんど入れ違いで現れたE組担任に頭を下げて歩き出した。


因みに朝比奈の悲鳴みたいな怒鳴り声が聞こえた気がしたが、そんなの知らん。
知るもんか、ばーか。








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