…8。
思いっきり顔をしかめると、スーツの袖でグイグイと口を拭った。
「…いっぺん死ね。」
「あはは。無理。」
二回も唇を奪われるとか、俺ってもしかしてメチャクチャ抜けてる?
別にファーストキスとかそんなんじゃないけど(まあ、男限定では初ではあるが)、そうそう簡単にする習慣なんかない。
てか、ここに来てから既に二回目って。
俺のファーストキスって、大学生になってから元カノと、なんだけど。
しかも元カノとの経験しかない。
「……。」
色々とメンタル面に影響しそうな事実にがっかりしそうだ。
ここに来てからトラウマになりそうな事ばかり起こっている事実に気付かないフリをして、
「…ファイル、ありがとうございました…」
弱々しく再度お礼を言うと、無限を見ないようにして歩き出した。
なんか後ろから言っている気がするが、もう無視だ無視。
気になんかしてやるもんか、ばーか。
簡単にいえば現実逃避。
自分を庇護するなら、無駄にグチグチ考える時間を効率よく使ったとでも言っておこう。
対等(…だとは思いたくないが、労力を考えれば不本意ながら対等)、又はそれ以上かもしれないファイルを開きながら、HRの間にクラスメートの顔と名前を覚える事を頑張ってみた。
話したりすれば直ぐかもしれないが、紙面上だとなかなか覚えづらいもんだな、うん。
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