…10。
うっかり腐男子全開で、変なテンションになってしまった思考に咳払いすると、
「…………まあ、未遂だし…俺だって不名誉だし…」
何より風紀のお世話になる、“生徒”じゃないし…。
秘密に出来るに越した事はないっていうか…。
縛られていた腕を解かれ、乱れたままだった服を丁寧に直してタオルで顔を拭うと、「ふぅ」と一つ息を吐いた。
無かったことにするのは容易い。
口を噤めばいいだけなんだから。
でもそれじゃ、負けたみたいな気がして嫌だ…。
「…名前。」
「は?」
「名前と学年、教えて下さい。」
目を伏せたままそう言うと、しばらく口を閉ざした風紀委員?は、仕方なくって感じに口を開いた。
「……朝比奈、夕陽(あさひなゆうひ)。二年。」
もしかして、髪の色は名前に合わせたのかな?とか、二年って事は、授業受け持つかも。とか。
なんか色々余計な事を考えた後、
「じゃあ、朝比奈くん。
月曜の放課後、生物準備室のお掃除よろしく。」
「はぁ!!?」
いきなり掃除を言い渡されて、「何言ってんの?」と顔をしかめる朝比奈の為に、ポケットからIDカードを取り出した。
「新任の、原田翔汰です。」
“新任”を強調して突きつけるように前に出したカードは、職員証と書かれた顔写真入りのID兼クレジットカード。
怪訝そうな表情を浮かべていた朝比奈は、それを認識した途端、みるみるうちに顔色を変えて行く。
「入学式、サボったでしょ?
俺、ちゃんと挨拶したのに。」
…てか、ちゃんと教師だって言ったのに。
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