…10。
…うん。やっぱり初耳。
「そんな、悪いよ。」
たかが病院に行くのに付き添ってもらうとか、俺一体何様ですか?
しかも、先生が生徒に付き添うならともかく、生徒が先生に付き添うなんて訊いたこともない。
とりあえず確認を取ろうと携帯電話を取り出すと、不在着信を知らせるライトが点灯していた。
…夏兄から?
「ちょっと待ってて、…あ!ここじゃアレだから上がって。」
すぐに折り返そうと思ったけど、朝比奈を廊下に出したままになんて出来ない。
未だに壁に寄りかかったままの朝比奈の手を引くと部屋に上がらせ電話を取った。
「ごめんね、ちょっと待っててね。あ、適当に座ってていいから。」
言うやいなや、急いで発信ボタンを押して奥の部屋へ行った俺には、
「……危機感なさ過ぎだろ。」
俺が掴んだ手を見ながら、溜め息混じりに朝比奈が呟いた事に気付かなかった。
◇ ◇ ◇
『―…はい。』
「あ、夏兄?」
数コールで出た夏兄は、俺の声を聞くと安心したように声を和らげた。
『良かった…。電話に出ないから何かあったんじゃないかって心配してたんだ。』
「あ、ごめん。携帯マナーモードにしたままで気付かなくて。」
『いや、無事ならいいよ。』
「…心配させてごめんね?」
昨日の今日だ。よほど心配させていたみたいで申し訳ない。
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